東京都 国立天文台三鷹キャンパス ― 2026年04月25日

東京都三鷹市にある国立天文台三鷹キャンパスは、国立天文台の本部となる施設です。
歴史は古く、1888年に港区麻布に国立天文台の前身となる東京天文台が設置されます。
1924年に現在の三鷹市に移転を完了し、星を観測して経緯度の決定、暦の計算、時間の決定などを行いました。
1988年、水沢の緯度観測所と統合して国立天文台になります。 国立天文台は文部省の管理でしたが 2004年から法人化され、大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台となります。

国立天文台三鷹キャンパスに来るのは久しぶりです。
昔は年1回の特別公開の日にちょくちょく来ていたのですが、最近は長い事、足が遠のいていました。 実に、13年ぶりの訪問で、特別公開日以外の見学は初めてです。
国立天文台三鷹キャンパスに再訪するきっかけになったのは、昨年、野辺山宇宙電波観測所を見学した事です。 名探偵コナンの映画の舞台にならなければ、もっと足が遠のいていたかも知れないですね...。
東京国立天文台・正門

駐輪場
正門を通って直ぐ右の受付で通常見学の受付をします。
ここで見学者用のワッペンを貰います。
バイクの場合、受付の正面が駐車場なので楽で良いです。
車の場合は少し離れた場所に見学者用の駐車場がありますが有料です。
特別公開日と比べると通常見学は見学出来る範囲が限定されますが、その分、人が少ないのでゆっくり見学する事が出来ます。 特別公開日は非常に混雑します。
東京国立天文台・駐輪場

第一赤道義室
1921年に建てられた鉄筋コンクリート製(ドーム部は木製)の観測ドームで、国立天文台三鷹キャンパスの中で一番古い建物です。 国の有形文化財にも登録されています。
設置されているのは 1927年に造られた、カールツァイス製 口径 20cm、焦点距離 359cm の屈折望遠鏡です。 赤道義は重錘式時計駆動赤道義で、この赤道義は電気を使わずに重力で錘が下がる力を時計の駆動力のように利用して赤道義を動かします。 稼働時間は 1時間半との事。
1938年から約 60年間、太陽の黒点スケッチ観測に使用されていました。 現在は別の太陽観測用望遠鏡を使った CCD カメラによる自動観測に移行しています。
以前、特別公開日に訪問した時は実際に望遠鏡が稼働しており、太陽の黒点が投影されていた記憶があります。
東京国立天文台・第一赤道義室

東京国立天文台・第一赤道義室

東京国立天文台・第一赤道義室

太陽系ウォーク
第一赤道義室から天文台歴史館の間は「太陽系ウォーク」と呼ばれる通り道です。
太陽系の大きさを 140憶分の 1 に縮小して太陽から惑星までの距離を表現しています。
太陽の近くに、水星、金星、地球、火星が見えますが、木星、土星はほとんど見えません。
東京国立天文台・太陽系ウォーク

4D2U ドームシアターの建物付近に土星の看板がありました。
太陽から相当、離れている事が体感できます。
後で知ったのですが、看板の上にある土星の模型は、天体のサイズを 14憶分の 1 に縮尺したサイズになっています。
東京国立天文台・太陽系ウォーク

訪問時は、地球や火星の看板に惑星の模型が付いている事にまったく気が付きませんでした。 後で写真を見直したら、火星の看板の上の方にも非常に小さな球体が付いてました...。
多分、スタート地点の太陽の看板も、太陽の大きさを表してるのかも知れません。
太陽系の大きさや、木星や土星の巨大さが体感できる、何気に面白い展示です。
東京国立天文台・太陽系ウォーク

天文台歴史館(大赤道義室)
1926年に建てられた大赤道義室は、国立天文台三鷹キャンパスの中で一番大きな観測ドームです。 建物は鉄筋コンクリート製で、ドーム部分は木製です。
こちらの建物も国の有形文化財として登録されています。
中には日本最大の屈折望遠鏡が設置されています。
主に、星の位置を測定してましたが、1998年に引退しています。 現在は、国立天文台に関する資料や、他の観測機器などと共に資料館として公開されています。
東京国立天文台・天文台歴史館

設置されたのは 1929年のようで、カールツァイス製です。
主望遠鏡の大きさは、口径 65cm、焦点距離 1021cmです。 副望遠鏡でも、口径 38cm、焦点距離 1083cm もあります。 焦点距離は、焦点距離の方が長いのですね...。
望遠鏡の角度によって接眼レンズの高さが変わるので、床の高さが変わる仕組みになっています。 (現在は固定)
この望遠鏡の巨大さは、実物を見ないと伝わらないかも知れません。
東京国立天文台・天文台歴史館

東京国立天文台・天文台歴史館

太陽塔望遠鏡(アインシュタイン塔)
色々な名前で呼ばれているようですが、太陽分光写真義室が一番正確なのかも知れません。
アインシュタインの一般相対性理論を検証するために建てられた、ベルリン郊外のポツダム天体物理観測所と同じ目的の建物な為、「アインシュタイン塔」とも呼ばれています。
1930年に建てられた建物で、塔全体が望遠鏡の役割を担います。 こちらも有形文化財として登録されています。
建物上のドームから太陽光を取り入れて、建物の下の装置に集約されます。 そこから半地下の部屋に太陽光を導いて、スペクトル観測を行います。
普段は内部見学出来ませんが、以前の特別公開日には内部を見学する事ができました。
東京国立天文台・太陽塔望遠鏡

展示室
国立天文台が行っているプロジェクトや研究・観測結果などを展示しています。
すばる望遠鏡や、アルマ望遠鏡、TMT 望遠鏡、太陽観測衛星「ひので」など、さまざまな観測機器に関する資料などが展示されてました。
東京国立天文台・展示室

展示室に公開されていた TMT望遠鏡の主鏡の一部です。
TMT は複数の鏡を合わせた口径 30m の巨大望遠鏡を作る計画で、複数の国の協力によって建設が進められています。
1枚1枚の鏡は六角形をしており、対角の長さは 1.44m です。 この鏡を 492枚合わせて主鏡にしますが、交換用の予備を合わせると 574枚が必要になります。
これらの鏡はセンサーで監視され、リアルタイムに調整されます。
東京国立天文台・TMT望遠鏡の主鏡の一部

レプソルド子午儀室
1925年に建てられた建物です。 こちらは建物、および、設置されているレプソルド子午儀が国の有形文化財として登録されています。
今まで観測室には無い、洒落た感じの建物です。 子午儀なので、真北~真南の子午線上が観測出来れば良いのですが、屋根が開閉するようには見えない建物です。 この建物からどうやって観測していたのでしょうか?
現在、レプソルド子午儀室資料館として使用されており、他の子午儀も展示されています。
東京国立天文台・レプソルド子午儀室

子午儀は 1880年のドイツ製です。
天文台が麻布にあった頃は時刻の決定と経度測量に使われていました。
三鷹に移ってからは月、惑星、小惑星などの赤経の決定に使われ、1937年からは恒星の赤経の決定に使われました。 1962年に赤道帯の恒星観測が終了し、役目を終えました。
かなり古い観測機器で、歴史的な価値がある貴重な望遠鏡です。
口径 13.5cm、焦点距離 212cm の屈折式です。
東京国立天文台・レプソルド子午儀

ゴーチェ子午環室
1924年に建てられた観測室です。
半円系の観測室に、台形屋根の出入り口を取り付けた特徴のある建物です。
子午儀と子午環の違いがあまり良く分かって無かったのですが、子午線を通過する時刻を正確に測る子午儀に、高度を正確に読み取る為の目盛り環を軸に取り付けたのが子午環のようです。
東京国立天文台・ゴーチェ子午環室

このゴーチェ子午環は 1903年のフランス製です。 1904年に当時の価格で 2万円で購入しました。 天文台が麻布にあった頃に試験運用され、1924年に三鷹に移ってから本格運用されました。 1982年に新しい自動光電子午環の運用が開始された為に第一線を退きますが、1992年に最新の CCD マイクロメータを装備して 2000年頃まで精密観測に使用されました。
口径 20cm、焦点距離 310cm の屈折式です。
ゴーチェ子午環は、国の有形文化財として登録されています。
東京国立天文台・ゴーチェ子午環

天文機器資料館(自動光電子午環室)
1982年に建てられた観測室なので、今までの建物と比較するとかなり新しいです。
この建物に設置されていたのは、先ほどのゴーチェ子午環に代わりに導入された自動光電子午環です。 ゴーチェ子午環は目視観測だったので人によって偏りが多かったのですが、自動光電子午環はその 5倍の精度がありました。
しかし、ヨーロッパの宇宙機関が 1989年に天体位置観測用の人口衛星を打ち上げると、自動光電子午環の 10倍以上の精度で観測できるようになります。
位置観測の主流は人工衛星へと移り、自動光電子午環による観測は 2000年に終了します。
現在は、様々な観測機器を展示する資料館として使用されています。
東京国立天文台・天文機器資料館

内部には、本当に色々が観測装置が展示されています。
左奥に見える、真上を向いている望遠鏡が 19cm 自動光電子午環のようですが、観測機器に対して建物が大きすぎるような気が...。
東京国立天文台・天文機器資料館

スバル望遠鏡 CIAO
CIAO(チャオ)は、大気の揺らぎを取り除く補助光学機能と、大口径を使って得られる高解像度を利用するコロナグラフです。 コロナグラフは、明るい中心天体の光を遮る事により周辺の暗い天体を観測しやすくする装置です。
系外惑星の観測などに使用されていました。 2006年からは後継の HiCIAO が稼働した事により CIAO は役目を終えました。 しかし、これだけ巨大な装置だと、説明が無いと観測装置には見えないですね..。
東京国立天文台・スバル望遠鏡CIAO

子午線標
自動光電子午環室の南北に小さな小屋があります。
これは、子午環が正確な南北を定める為の目印となる装置です。
100m 以上離れた場所に設置し、距離が離れているほど精度が上がります。
近くで建物を見ると小さな穴が開いています。 恐らく、その穴を使って正確な位置を特定するのだと思います。
東京国立天文台・子午線標

特別公開日にしか見学に来た事が無かったのですが、人が少ないのでじっくり見学する事が出来ました。 通常公開も悪く無いと思いました。
今度は、十数年ぶりに特別公開日に来たいと思います。